大阪地方裁判所 平成3年(わ)611号 判決 1991年9月20日
本店所在地
大阪市浪速区元町一丁目五番七号 ナンバプラザビル
大東音響株式会社
(右代表者代表取締役 笹尾高造)
本店所在地
大阪市淀川区西中島五丁目七番一四号 大京ビル
ベンハー株式会社
(右代表者代表取締役 笹尾高造)
本籍
大阪府東大阪市北石切町一〇番
住居
同町一〇番二号
会社役員
笹尾高造
昭和五年五月四日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宮下準二出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人大東音響株式会社を罰金一一〇〇万円に、被告人ベンハー株式会社を罰金三七〇〇万円に、被告人笹尾高造を懲役一年八月に処する。
被告人笹尾高造に対し、この裁判が確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
第一 被告人大東音響株式会社(以下、「被告会社大東音響」という。)は、大阪市浪速区元町一丁目五番七号ナンバプラザビルに本店を置き、遊技機器製造販売を業とするもの、被告人笹尾高造(以下、「被告人」という。)は、被告会社大東音響の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社大東音響の業務に関し法人税を免れようと考え、
一 昭和六二年六月一六日から昭和六三年六月一五日までの事業年度における実際所得金額が一億九九五〇万六八八〇円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、販売代理店等に直接販売した遊技機器の取引をベンハー株式会社に販売したように仮装して、当該取引に係る利益の一部を除外するほか、売上げの一部を除外するなどの方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、延長された申告期限内である同年九月一二日、大阪市浪速区難波中三丁目一三番九号所在の所轄浪速税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八二三三万三〇五〇円で、これに対する法人税額が三三五八万四七〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社大東音響の右事業年度における正規の法人税額八二七九万七四〇〇円と右申告税額との差額四九二一万二七〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れた、
二 昭和六三年六月一六日から平成元年六月一五日までの事業年度における実際所得金額が四億三七九七万九六三〇円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、売上げの一部を除外するなどの方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、同年八月七日、前記浪速税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四億二二二七万九七一〇円で、これに対する法人税額が一億七二五三万三九〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社大東音響の右事業年度における正規の法人税額一億七九三〇万八〇〇円と右申告税額との差額六七六万六九〇〇円(別紙(三)税額計算書参照)を免れた、
第二 被告人ベンハー株式会社(以下、「被告会社ベンハー」という。)は、大阪市淀川区西中島五丁目七番一四号大京ビルに本店を置き、遊技機器販売を業とするもの、被告人は、被告会社ベンハーの代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社ベンハーの業務に関し、法人税を免れようと考え、昭和六三年六月一五日から平成元年三月三一日までの事業年度における実際所得金額が四億二五三九万八四〇一円(別紙(四)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、公表経理上架空の仕入れを計上するなどの方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、同年五月三〇日、大阪市淀川区木川東二丁目三番一号所在の所轄東淀川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六五一二万八六二五円で、これに対する法人税額が二六二六万五〇〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社ベンハーの右事業年度における正規の法人税額一億七七五六万八〇〇〇円と右申告税額との差額一億五一三〇万三〇〇〇円(別紙(五)税額計算書参照)を免れた
ものである。
(証拠の標目)
(注)括弧内の算用数字は証拠等関係カードの検察官請求分の請求番号を示す。
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通(95、96)
一 被告人に対する収税官吏の質問てん末書一三通(72、74、75、77ないし80、83、85、86、88、89、91)
一 藤川恵(五通、30、34、35、39、40)、福田啓一(三通、42、44、48)に対する収税官吏の各質問てん末書
判示第一の一、二の事実について
一 被告人に対する収税官吏の質問てん末書三通(87、90、92)
一 藤川恵(三通、33、36、38)、福田啓一(二通、43、47)、笹尾節子(49)、砂村禮子(51)、長谷川文恵(52)、鶴弘(53)、松村昭(56)、糀谷普(57)に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の査察官調査書一三通(6ないし18)
一 浪速税務署長作成の証明書(58)
一 被告会社大東音響代表者作成の証明書(66)
一 登記簿謄本(60)、閉鎖登記簿謄本五通(61ないし65)
一 検察事務官作成の捜査報告書(5)
判示第一の一の事実について
一 浪速税務署長作成の証明書(3)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(1)
判示第一の二の事実について
一 浪速税務署長作成の証明書(4)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(2)
判示第二の事実について
一 被告人に対する収税官吏の質問てん末書七通(73、76、81、82、84、93、94)
一 藤川恵(三通、31、32、37)、福田啓一(三通、41、45、46)、砂村禮子(50)、東野隆(54)に対する収税官吏の各質問てん末書
一 収税官吏作成の査察官調査書八通(22ないし29)
一 東淀川税務署長作成の証明書二通(20、59)
一 被告会社ベンハー代表者作成の証明書(69)
一 登記簿謄本(67)、閉鎖登記簿謄本(68)
一 検察事務官作成の報告書(21)
一 収税官吏作成の脱税額計算書(19)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年八月に処し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
更に、被告人の判示第一の各所為は被告会社大東音響の業務に関してなされたものであるから、同被告会社については、法人税法一六四条一項により判示第一の各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社大東音響を罰金一一〇〇万円に処することとする。
また、被告人の判示第二の所為は被告会社ベンハーの業務に関してなされたものであるから、同被告会社については、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用し、その金額の範囲内で被告会社ベンハーを罰金三七〇〇万円に処することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 仙波厚)
別紙(一)
修正損益計算書
<省略>
別紙(二)
修正損益計算書
<省略>
別紙(三)
税額計算書
<省略>
別紙(四)
修正損益計算書
<省略>
別紙(五)
税額計算書
<省略>